| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-098 (Poster presentation)

タイ北部の落葉性チークの年輪同位体比に降水変動が及ぼす影響

早嵜浩(三重大・生物資源), 松尾奈緒子(三重大院・生物資源), *高梨聡(森林総研), 吉藤奈津子(森林総研), 藤原健(森林総研), 五十嵐康記(名大・宇宙地球), 田中延亮(東大・生水研), Chatchai Tantasirin(カセツァート大)

タイ北部の落葉性チーク林では,雨季の開始・終了時期に応じてフェノロジーが年々変動することが報告されている.しかし,雨季中の降水パターンに対するチークの年輪成長や生理特性の応答についての研究は少ない.そこで,チーク2個体の円盤試料の各2方向から過去10年分の年輪試料を採取し,一年輪を2~16分割して木部組織中の酸素安定同位体比(δ18O)と炭素安定同位体比(δ13C)を測定し,雨季中の降水量や日平均土壌体積含水率との関係を調べた.木部組織のδ18Oの変動が主に降水のδ18Oの変動を反映していると仮定し,本調査地で観測された降水のδ18Oと日降水量に負の相関があったことに基づいて,一年輪内の木部組織のδ18Oの変動を展葉開始後の10日間の積算降水量の変動と対応させた.その結果,年輪成長は雨季中の降水パターンによって以下の3つに分類できると考えられた.降水量が雨季開始直後に多く,その後少ない期間が続き,再び増加した年には,二度目の降水量の増加時に年輪成長が停止し,この二度目の降水量増加までの期間が年輪成長量に影響する.次に,雨季開始から2か月以上降水量が少ない期間が続いた後,短期間に大量の降水があった年には,降水量の増加時に年輪成長が停止し,年輪成長量が少ない.最後に,雨季を通して降水量の変動が小さい年には,雨季終了まで年輪成長が継続し,年輪成長量が多い.さらに,上記の分類ごとに木部組織のδ13Cと土壌体積含水率の関係を調べ,雨季中の降水パターンが葉の水利用効率に及ぼす影響について考察した.


日本生態学会