| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-117 (Poster presentation)

ネムノキが持つ頂生花と側生花の形態と繁殖機能の分化

*加藤沙織(福島大・院・共生システム理工),水澤玲子(福島大・人間発達文化),黒沢高秀(福島大・共生システム理工)

異形花とは1種類の植物が持つ複数種類の花型のことである。代表的なものに雄花と雌花,長花柱花と短花柱花,L型花とR型花,装飾花と普通花,閉鎖花と開放花などがある。マメ科ネムノキ属のネムノキAlbizia julibrissin Durazz.も約20小花からなる頭状花序に花蜜を保持する頂生花を持つ。頂生花はその周囲の側生花と比べて長い花冠と花糸の合着部を持つとされる。ネムノキの頂生花と側生花がどのような機能を分化させているか,またよく知られている異形花に当てはまるかどうかを明らかにするために研究を行った。花の各部の形態に関して計測を行い,主成分分析で解析した。その結果,頂生花は側生花より,萼の太さと長さ,花冠の長さ,花糸の合着部の長さなどが有意に大きかった(Mann–WhitneyのU検定,p<0.01)。花蜜は頂生花のみで確認された。走査型電子顕微鏡を用いた花粉塊サイズの計測とショ糖-寒天培地を用いた花粉伸長割合の算出では,頂生花と側生花に有意な差が認められなかった(Mann–WhitneyのU検定,n.s.)。結果率調査では,頂生花の結果が確認されなかったが,結果率が極めて低く,十分な数が得られず,有意な差が認められなかった(Wilcoxonの順位和検定のBonferroni補正,n.s.)。以上のことから,ネムノキの頂生花と側生花は花蜜の有無に対応した形態を分化させており,前者は大量の花蜜を保持するのに適した形質であると考えられる。もしネムノキの頂生花に結果能がない場合は,被子植物で珍しい雄性両全性同株である。もし頂生花が結果する場合は,これまでよく知られていた主な異形花に当てはまらないものと考えられる。


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