| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-119 (Poster presentation)

ヒサカキにおける花形質の雌雄差

辻かおる, 大串隆之 京大生態研センター

雌雄異株植物では、送粉者を誘引する花形質に雌雄差がみられる。この形質は送粉者に対する広告と報酬に分けて考えることができ、広告には主に送粉者をより多く誘引する効果が、報酬には主に送粉者の滞在時間をのばす効果がある。この広告と報酬が繁殖成功に与える影響は雌雄で異なっている可能性がある。送粉者が訪花するほど、雄の繁殖成功は増加すると考えられる。しかし、一匹の送粉者に花粉が付着できる量は限られており、自花の花粉が付着した送粉者が長時間滞在しても、雄の繁殖成功度の増加は望めない。そのため、雄では、広告が報酬よりも繁殖成功に寄与している可能性がある。一方、雌では、滞在時間が長くなれば柱頭に付着する花粉量が多くなり、より多くの胚珠が受粉できるだろう。そのため、雄とは逆に、報酬が広告よりも繁殖成功に寄与している可能性がある。そこで、広告と報酬の送粉者を介した繁殖成功に対する役割の違いの可能性を検証するため、雌雄異株植物ヒサカキを用いて、広告の指標として花弁に、また、報酬の指標として花蜜にも着目した。花弁の大きさと花蜜の糖度を雄とメスで比較したところ、雄の花弁は雌より大きく、雌の花蜜の糖度は雄より高いことが明らかになった。以上の結果から、雄は雌に比べ送粉者を呼ぶために、報酬よりも広告により多くの資源を投資していると推測できる。


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