| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-139 (Poster presentation)

Kernel Density Estimation法による細菌群集サイズ分布の推定

*吉山浩平(滋賀県大・環境),武藤啓悟(岐阜大・応用生物)

生物群集を構成する個体のサイズ分布は,生態系の構造と機能を表す重要な情報のひとつである.生態系の中で細菌は分解者の役割を担っているが,水域生態系の細菌群集において環境条件と個体サイズ分布を関連付けた研究はこれまで見られない.本研究では,Kernel Density Estimation法(KDE法)を用いて,細菌細胞サイズ分布の推定し,得られた母集団の細胞サイズ分布データと環境条件との関係を解析した.KDE法とはそれぞれのデータを一定のバンド幅をもった正規分布とみなし,それらをすべて足し合わせることにより母集団の確率密度分布を推定するノンパラメトリックな統計手法である.解析には,2002年5月~12月の期間に琵琶湖北湖において得られた細菌細胞サイズデータ,および環境データを用いた(Nishimura & Nagata 2007, Aquat. Microb Ecol 48:231-240).得られた推定母集団サイズ分布から,生物多様性指数,平均細胞サイズ,分散を計算し,それらを含むサイズ分布データと環境条件との相関分析を行った.KDE法の結果から表層より19日分,クロロフィル極大層より21日分の細胞サイズ分布が得られた.相関分析の結果,表層,クロロフィル極大層において,栄養塩,クロロフィル濃度と平均細胞サイズおよびサイズ多様性との正の相関関係が示唆された.その一方で,水温と細胞サイズおよび多様性との関係は認められなかった.細菌群集はアルファ・ベータプロテオバクテリアや古細菌など複数の系統分類群で構成されており,それぞれが環境要因の変化に対して独自の応答を示す可能性ある.今後は各分類群ごとの細胞サイズ分布を推定し,それぞれについて環境要因との関連を調べていく必要がある.


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