| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-197 (Poster presentation)

捕食者と植食者が植物の形質を介して節足動物群集に与える 間接効果

*平野滋章(京大生態研), 大串隆之(京大生態研)

複雑な生物群集の動態を理解するためには、その基本的な最小単位である植物、植食者、捕食者からなる3栄養段階間の相互作用を解明することが不可欠である。植食者による食害は植物の抵抗性を誘導するため、その後に植物を利用する節足動物の個体数や種数が減少することが知られている。一方で、捕食者がいることによって、植物が植食者から受ける食害が軽減され、植物の誘導抵抗性が弱まることが報告されている。そのため、捕食者は、植食者が植物を介して群集に与える負の効果を弱めることが予測される。このような捕食者の間接効果の解明は、植物上で多様な生物群集が維持される機構の理解に貢献できると考えられる。

本研究では、植物(ジャヤナギ)と、ヤナギ科のスペシャリスト植食者(ヤナギルリハムシ幼虫、以下ハムシ幼虫)、捕食者(ハナグモ)を用いて、以下の3つの問題を検証した。①ハムシ幼虫の食害はジャヤナギの抵抗性を誘導するのか?②ハナグモはハムシ幼虫の食害を軽減することによってジャヤナギの誘導抵抗性を弱めるのか?③ジャヤナギの抵抗性が低下すると植食者群集の個体数や種数が増加するか?その結果、以下の3点が明らかになった。①ハムシ幼虫の食害が防衛物質である縮合タンニンの濃度を増加させた。②ハナグモはジャヤナギがハムシ幼虫から受ける食害量を減少させ、縮合タンニンの濃度を減少させた。③縮合タンニンが減少しても植食者群集の個体数と種数は増加しなかった。しかし、植物がハムシ幼虫から受けた食害率が減ると、植食者群集の種数が増加した。以上の結果から、捕食者によって、植食者が植物を介して群集に与える負の効果が弱められることが示唆された。


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