| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-200 (Poster presentation)

ナラ枯れ被害量の推移と分布拡大様式は森林の広域的な分布パターンで説明できるか

*伊東康人(兵庫農技総セ),山崎理正(京大院・農)

病原菌を有するカシノナガキクイムシが穿孔することによって引き起こされるブナ科樹木萎凋病(ナラ枯れ)が,日本各地で蔓延している.被害が発生する森林の特徴を捉え,広域レベルでの被害拡大様式を明らかにすることは,今後の被害予測をする上で重要である.被害の拡大には,気象変動に伴うカシノナガキクイムシの繁殖成功度,カシノナガキクイムシの移動分散様式,分散先の森林の状態などが影響していると考えられる.先行研究によれば気象の影響は一貫しておらず,移動分散に関しては前年の被害地からの距離を組み込むことで被害予測モデルが改善されている.本研究では森林植生の広域的な分布パターンに注目した.兵庫県(8,396km2)における過去7年のナラ枯れの被害発生を解析し,ナラ枯れ被害量の推移と分布拡大様式に植生の分布パターンがどのように影響を及ぼしているかを明らかにすることを目的とした.

解析には、2009年から2015年にかけての兵庫県の被害発生量データ,環境省の1/50,000植生データ(1994〜1998年に調査)を用いた.被害発生量データには被害林の位置及び4段階の被害程度が記録されている.兵庫県内を2kmメッシュの格子状に区切り,各メッシュに各年の被害有無、植生データから抽出したコナラ林,ミズナラ林,スギ・ヒノキ人工林,その他森林,森林以外の面積割合を与え,傾向化除去対応分析(DCA)を用いて序列化した.被害量が少なかった2013年と2014年にはその他森林と人工林の割合が高いメッシュでの被害が目立ったが,被害が減少後に再び増加した2015年にはコナラ林での被害が増加していた.20年前の調査でその他森林に区分されている森林が,被害拡大に影響を及ぼしていることが示唆された.


日本生態学会