| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-207 (Poster presentation)

種間相互作用が駆動する病原菌の進化動態変化

*山本京祐, 草田裕之, 鎌形洋一, 玉木秀幸(産総研・生物プロセス)

【背景・目的】生物の進化動態の理解には、共存種間の相互作用を含めた生態プロセスの寄与を理解することが極めて重要である。そこで本研究では、感染創等の実環境中で共存する二種の病原性細菌、緑膿菌(PA)と黄色ブドウ球菌(SA)による実験室進化系を用い、各々の表現型進化や個体群動態に対する種間相互作用の影響、さらには進化による相互作用の変化を解析することで、これらの病原菌の進化過程における種間相互作用の寄与を明らかにすることを目的とした。これまでに、PAがSAの生育阻害物質を産生することが知られている。一方で、PAによる阻害作用に対してSAが耐性を獲得し残存可能となるケースも報告されており、生残したSAがPAの挙動に対して何らかの影響を及ぼす可能性が示唆されている。本発表では、SAの存在がPAの個体群動態や進化動態に与える影響について報告する。

【結果】PA純粋培養系とPA-SA共培養系の継代培養をおこない、個体群サイズ、およびコロニー形態の変化した株(Colony Morphology Variants, CMVs)の割合を経時的に測定した。全実験系において実験開始3~5日後にはPAのCMVsが現れ始め、時間経過とともにその種類も増加していった。また、PAに比べて個体群サイズは数オーダー小さいものの、SAは継代期間を通じて残存し続けた。約3週間に亘る培養の結果、全ての系において祖先型のPAは淘汰され、WrinklyタイプやSmoothタイプ等のCMVsが優占した。PA純粋培養系と比較して、PA-SA共培養系ではPA CMVsの多様性の低下がみられ、SAが共存することでPAの進化動態が変化することが明らかとなった。発表では、各種CMVsについておこなった全ゲノムリシークエンスや各種生理学試験の結果と合わせ、両種間の生態-進化フィードバックについて議論する。


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