| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-220 (Poster presentation)

コンパクトな保護区の背景にある群集構造

*竹中明夫,石濱史子(国立環境研究所)

多種の生物の区画ごとの在・不在情報をもとに、全種をカバーする区画のセットを選択する問題を考える。限られた面積で多種をカバーする効率のよい保護区を選ぶことは、保全生態学のテーマのひとつである。種の総数が多ければ全種のカバーに必要な区画の数(保護区サイズ)が大きくなる。また、それぞれの区画に分布する種数が平均的に多ければ、保護区サイズは小さくてすむだろう。

こうした直感的に理解できる要因以外にも、群集構造の特性は保護区サイズに影響を与える。本研究では、保護区サイズと群集構造の特性との関係を、人工の群集データを作成して検討した。そのために開発した群集データ生成プログラムComGenは、ひとつの環境軸に沿って区画が並んでいると仮定する。種ごとの出現区画数のパターン、区画ごとの分布種数のパターンを決め、両者を満たすようにそれぞれの種を配置する。そののち、ランダムに決めた種ごとの環境選好性を反映するように種の分布を調整する。

群集生成にかかわるパラメータの設定を網羅的に変えて人工群集を生成し、それぞれについて全種を含む保護区のサイズを求めたところ以下の結果が得られた。

1. 区画あたりの平均分布種数は変えずに、区画のあいだでの分布種数のばらつきを大きくすると、よりコンパクトな保護区で全種をカバーできた。これは、種多様性が非常に高い区画が生じるためだと理解できる。

2. 種ごとの出現区画数の平均値は変えずに、種間での出現区画数のばらつきを大きくすると、全種をカバーするのにより多くの区画が必要となった。これは出現区画数が少ない希少種が増えるためだと理解できる。

3. それぞれの種の環境選好性を反映させた人工群集では、ランダムに配置した場合と比べて1割から9割近くコンパクトな保護区で全種をカバーできた。これは、環境が異なる区画を選んだ場合に重複する種数が小さくなり、カバーされる総種数が増えるためと理解できる。


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