| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-230 (Poster presentation)

断片化した広葉樹林における果実食鳥類の種数・個体数を規定する要因: 季節および鳥類機能群による違い

*吉川徹朗(森林総研), 原澤翔太(環境省), 新倉夏美, 小池伸介(東京農工大院), 直江将司, 正木隆(森林総研)

断片化した森林における果実食鳥の種数や個体数の規定要因を明らかにすることは、鳥類群集の保全、またその種子散布者としての生態系機能の保全のうえで不可欠である。一般に森林断片化は鳥類の種数や個体数に負の影響を与えるが、その程度はマトリックスの様態によって異なることが知られている。マトリックスが針葉樹植林地の場合には断片化の負の影響は比較的弱く、局所的な食物資源量や林分特性など他の要因がより重要となる可能性がある。またこれらの要因の相対重要度は季節や鳥類のグループによっても異なる可能性がある。

本研究では、植林により断片化した茨城県北茨城市周辺の広葉樹林パッチにおいて、約3年間にわたり果実食鳥の種数および個体数を調査し、その規定要因を探った。規定要因として景観構造、液果資源量、および林分特性を検討した。これらを説明変数、果実食鳥類の種数・個体数を目的変数とする一般化線形混合モデルを構築し、各要因の相対重要度を評価し、またこれを季節や鳥類の体サイズクラスについて比較した。

その結果、繁殖期の果実食鳥の種数・個体数はおもに胸高断面積合計などの林分特性に規定されるが、非繁殖期には液果資源量の影響が他の要因を上回っており、規定要因は季節的シフトを示した。また鳥類の体サイズクラスによって規定要因に違いが見られ、とくに大型鳥類では他と異なる傾向が見られた。以上の結果から、繁殖期の鳥類群集の保全においては成熟した森林を維持することが、非繁殖期においては液果資源量を増加させることが、鳥類の多様性に配慮した森林管理において重要であるという知見が得られた。


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