| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-234 (Poster presentation)

亜寒帯林における植物-植食性昆虫-寄生蜂の群集構造解析

*阿部永(千葉大学大学院理学研究科), 福島宏晟(千葉大学大学院理学研究科), 阿部智和(東京大学大学院), Rajesh Kumar(Central Muga Eri Research and Training Institute), Martin Volf(チェコ科学アカデミー), Martin Libra(チェコ科学アカデミー), 鎌田直人(東京大学), Vojtech Novotny(チェコ科学アカデミー), 村上正志(千葉大学大学院理学研究科)

食物網の構造に関するこれまでの研究の多くは非常に空間スケールの大きい大規模なサンプリングの結果によって行われており、空間スケールの大小と食物網構造の関係についての報告は少ない。本研究では植物と植食性昆虫及びその寄生蜂の食物網で、空間スケールの変化が食物網の構造に与える影響を調査した。

サンプリングによって19種130個体の樹木から9174個体の鱗翅目幼虫と632個体の寄生蜂が得られた。作成した食物網と樹木を基準とした空間スケールデータを利用し、食物網構造の指数と空間スケールとの関係を解析した。

解析の結果、いずれの指数も空間スケールの増加に伴い、食物網構造が複雑になることを示した。これらはいずれも半径30m前後のスケールで飽和し、食物網構造がこのスケールで安定することを示す。各指数の空間スケールへの反応は異なっていた。例えば、種数の増加に対し、connectanceの減少はより速く、connectanceが空間スケールにより敏感に反応することが示された。

これらの結果は食物網の構造が空間スケールによって変化し、サンプリングの空間スケールの大小によって全く異なる結果が導かれるということを示す。さらに、指数により空間スケールへの反応が異なることは、食物網構造としていくつかの側面があることを示唆するものである。


日本生態学会