| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-260 (Poster presentation)

奄美大島におけるトンボ相と景観構造との関係

*境 優(中央大・理工), 須田真一(中央大・理工), 桶田太一(中央大・理工), 鷲谷いづみ(中央大・理工)

奄美大島では、1970年頃からの減反政策の影響を受けて、1950年代には甘藷に次ぐ作付面積を誇っていた水稲の作付けが激減し、現在では非常に限られた面積の水田しか存在しない。かつての奄美大島では、年間を通して湛水する人為的湿田も数多く存在し、ため池を含めそれらの水田環境に創出された止水域は、水草・昆虫・両生類などの生息に適した環境となっていたと考えられる。本研究では、奄美大島で激減した止水域を棲家とするトンボ類の群集調査を行い、どのような条件をもつため池が保全上重要であるか、またどのような種が保全上注目すべきであるかを検討した。

調査は、周囲の環境(景観構造)の異なる10地点のため池において2015年6, 7, 9月に行った。現地ではポイントセンサス法(30分/池)によってトンボ相を把握するとともに、周辺環境(水草(抽水・沈水・浮葉植物)被度、捕食者(ティラピアの有無)、水質(NO3-)、周辺草丈)も記録した。また、調査地周辺(半径500m以内)の土地利用(森林・畑)および池面積を把握した。

合計6科27種のトンボが確認され、トンボ種数が最も多かったため池では22種、最も少なかったため池では10種が記録された。周辺に森林が多く、ため池内の抽水植物(<60cm)被度が高いほどトンボ種数が多くなることが判明した。また、クロスジギンヤンマ、コフキヒメイトトンボ、ハネナガチョウトンボ、マルタンヤンマ、リュウキュウトンボは、特に種数の多かったため池でのみ確認された。以上のことから、奄美大島において周辺に森林を擁し、背の低い抽水植物が生育するため池は保全上重要であり、上記トンボ種は保全上注目すべき種であると結論された。


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