| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-322 (Poster presentation)

絶滅危惧淡水魚イトウの産卵遡上の特徴

*福島路生(国環研), Rand, P.S.(Prince William Sound Science Center), 水本寛基(北大), 荒木仁志(北大)

イトウはサケ科に属する日本最大の淡水魚で、日本またロシアにおける本種の生息数・生息域の著しい減少や縮小を背景に2006年よりIUCNによって絶滅危惧種(CR)に指定されている。例年4月下旬から5月上旬に産卵のため河川を遡上するイトウ親魚を、3年間(2013-2015)、北海道宗谷地方を流れる猿払川において高解像度の音響ビデオカメラ(ARIS, Sound Metrics)によって撮影した。イトウの遡上数は335尾(2013)、425尾(2014)、528尾(2015)と過去3年間は年を追って増加の傾向を示した。単位時間あたりのイトウ遡上数を河川水温、水位、時間、照度などの環境変数を用いてモデル解析(GAM)したところ、水温の上昇に伴い遡上行動が活発になり5月初旬に遡上のピークを迎えたこと、遡上数が明瞭な日周期を示し、日中から夕暮れまでの時間帯に遡上が集中すること、さらに大型の雄が小型魚や雌よりも先に遡上する傾向のあることが分かった。

得られた結果は本希少淡水魚の有効な保全活動に資すると期待している。例えば、イトウの産卵河川に数多く設置され、しばしば融雪増水時に倒木によって閉塞しがちなカルバートを効率的に監視し、イトウの回遊経路の確保を通して、本種の再生産を手助けすることに寄与できる。また本研究で用いた手法は長期的(>10年)な個体数変動を記録する上でも有効である。

音響ビデオカメラは通常の光学式ビデオカメラと異なり夜間や濁水中でも鮮明な映像を取得できる。一方、光学式カメラと異なり色情報を記録できないなど、音響ならではの技術的制約があり、これについてもポスターで紹介する予定である。


日本生態学会