| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-331 (Poster presentation)

山形県長井市不伐の森における保全活動と生態系調査

*渡邊潔,上野満(山形県森研セ),布施敏道(山形県不伐の森に親しむ会)

不伐の森は、長井市民の永久財産として保存し将来に継承する目的で、平成元年に条例制定された面積20.3haの市有林である。調査地は標高約550m、面積約9haであり、主に森林と沼からなっている。沼の水面はジュンサイ、コオホネ等の水草で覆われ、ゲンゴロウ、ヒメミクリ、イヌタヌキモ等の希少生物が生息しており、生物多様性の観点からもその保全が重要となっている。

保全活動は、近年沼の水面域の減少が進んでおり、地元環境保全団体・不伐の森に親しむ会(以下、「不伐の森」と表記)が、その主要因と考えられるヨシの除去と周辺森林の整備(除間伐等)を続けている。しかし、活動が自然環境に与える影響評価を行なっていなかったことから、①保全活動が希少生物等に与える影響の把握、②沼と森林環境の保全に必要なデータの取得、を目的に現況把握のための生態系調査を行うことになった。

調査は、市民と一緒に継続して行えること、将来の変化をモニタリングでき再現性があること、定量的データを残すことを前提に、2007年から「不伐の森」との協働により9年継続してきた。内容は、①魚キラーを用いた水生生物のトラップ調査、②湿地に生息するトンボ類のライントランセクト調査、③沼の水位変動、水温と気温、pH調査、④周辺森林の方形区調査である。これらデータを基礎資料として生態系の変化を把握していくことが大切で、得られた成果は「不伐の森」と共同で蓄積しながら、保全活動の指針とすることにしている。本発表では、市民主体の保全活動と協働による調査事例を紹介し、今後の保全活動に向けた話題提供としたい。


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