| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-337 (Poster presentation)

水俣湾における水銀の生物濃縮機構解明 –遺伝子解析による魚類胃内容物の特定-

森 敬介*(国水研),小島茂明、瀬尾絵理子,新井谷梨鈴,廣瀬公子,伊藤 萌(東大大気海洋研)

水俣湾において魚類を頂点とした食物網解析と水銀濃縮の経路解明を目的とした研究を進めている。水俣湾の様々な環境(岩場や砂泥地)に生息する魚類の水銀レベルと食物選好性の関係を明らかにする目的で、2013年~2014年にかけて、水俣湾および周辺海域において漁獲された61種、600個体の胃内容解析を行い、食物選好性を調べた。目視にて出来る限り種までの同定を行ったが、消化の進んだ物やかみ砕かれている物は困難であった。今回、分類が困難な胃内容物の種名特定のために、魚類25種160個体の約200試料についてCO1領域の遺伝子解析を行い既存データベースとのマッチングによる種名確定を試みた。魚体や甲殻類の付属肢、貝殻破片など識別できる物は個別にして、形は不明瞭であるが固まりとして消化管から見つかる物(未消化物)、完全に消化し溶解した物(消化物)に区分して、分析試料とした。

この結果、付属肢など形の残っている物は(遺伝子が取り出せた物に対し)70%以上の確率で同定が出来た。未消化物や消化物については、半数近くは遺伝子が取り出せなかったが、多くの魚種の餌生物に関して様々な生物種が特定できた。分類群としては魚類の合致率が高く(50%)、無脊椎動物については合致率が低かった(20%以下)。この結果、目視では食物選好性が不明であった種類や魚類食・甲殻類食など大まかな分類群しか判らなかった魚種の餌種が特定でき、魚類の餌選好性と水銀レベルに関し、詳細な検討が可能となった。


日本生態学会