| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-339 (Poster presentation)

単食性希少バッタの食樹シマイスノキの遺伝構造と植栽計画への提案

*須貝杏子, 鈴木節子(森林総研)

シマイスノキDistylium lepidotumは小笠原諸島に固有な常緑低木で,乾性低木林の主要構成種である.この林分には2011年に新属新種として記載された固有種アニジマイナゴが生息する.アニジマイナゴはイナゴ科の中では例外的に草本食ではなく,木本植物のシマイスノキを唯一の食餌植物としていることが報告されている.現在,アニジマイナゴの主な生息地となっている兄島では外来トカゲのグリーンアノールが侵入しており,また外来樹種による生息環境の悪化も危惧されている.今後,兄島の状況がより悪化した場合に備え,アノールの侵入リスクの低い別の島へアニジマイナゴの保全的導入が検討されている.その際には,唯一の食餌植物であるシマイスノキが必須であるため,アニジマイナゴの保全的導入エリアへシマイスノキを人為的に植栽する可能性がある.そこで本研究では,シマイスノキの遺伝的な背景を明らかにして,種苗の移動に関するガイドラインを作成し,植栽による遺伝子攪乱を未然に防ぐことを目的とした.

聟島・父島・母島列島から採取した14集団321個体のシマイスノキについて,マイクロサテライトマーカーによる集団遺伝学的解析を行った.STRUCTURE解析や主座標分析の結果,聟島と父島列島は遺伝的に類似していたのに対し,それらと母島列島は遺伝的に異なっていた.また,種全体では有意な距離による隔離がみられた.父島列島内では父島南部の1集団を除いて,ほとんどの集団間で有意な遺伝的分化がみられなかったが、母島内では多くの集団間で有意な遺伝的分化がみられた.この結果を基に,シマイスノキにおける種苗配布区域を設定した.


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