| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-344 (Poster presentation)

類似度を考慮した景観不均一性指数の提案~耕作放棄の影響の評価のために

*吉岡明良(国環研), 深澤圭太(国環研), 三島啓雄(国環研), 佐々木恵子(ギーセン大), 角谷拓(国環研)

里地里山にみられるような農村景観の不均一性は、生活史において様々な生態系を利用する生物にとって重要と考えられており、その指数化・地図化は保全計画の策定上も重要な課題である。そのため、景観内の生態系(景観要素)の多様度に基づくさとやま指数(SI)等が提案されている。その一方で、近年、全国的に耕作放棄や休耕・転作が進行している。農地の変化はその規模と変化後の生態系のタイプによって景観の不均一性に及ぼす影響が変わってくると考えられる。例えば、森林と水田からなる景観において、水田が湿地的な耕作放棄地に変化する場合と畑地や乾燥した耕作放棄地に変化する場合では、従来の指標では特に違いは検出されない。しかし、トンボ類やカエル類等、陸域と水域の両方を用いる生物にとってその違いは重要となる。そのような違いを反映するためには、生態学的に類似した景観要素の組み合わせを過大評価しない指数を導入する必要がある。

本研究では系統学的多様性の概念をSIに導入することで、景観要素間の類似度を考慮した指数であるSimSIを提案するとともに、試行的に衛星画像データを用いて景観要素間の類似度を定義し、複数の土地利用図からSimSIを地図化した。また、SimSIとSIのどちらが全国のイトトンボ類の種数をよく説明できるかをProper CARモデルで解析したところ、解像度の高い土地利用図を基にした場合はSimSIの方がモデルを改善することが示された。

以上の結果から、SimSIは異質な生態系の組み合わせを要求する生物から見た農地の不均一性指数として適する可能性が示唆された。今後、複数時期の土地利用図に対してこの指数の概念を応用することで、耕作放棄等による里地里山景観の変化を適切に評価するのに役立つことが期待される。


日本生態学会