| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-362 (Poster presentation)

熱帯林の断片化景観における土地利用パタンが種多様性に与える影響

*竹内やよい(国環研),鮫島弘光(IGES),Jason Hon(WWF, Malaysia), Bibian Diway(BRC, Malaysia)

ボルネオ島の焼畑農耕民社会では、焼畑耕作地の間にプラウ(現地語で「島」の意)と呼ばれる小規模な森林を残し、林産物を採集するのに利用してきた。現在のプランテーション開発が進む景観においては、プラウは唯一の原生状態に近い森林である。個々のプラウが原生林と同等の生物多様性を持ち、またそれぞれ異なった種のセットを保持するならば、複数のプラウを保護することが、地域的な生物多様性の維持に有効であろう。本研究では、地域の生物多様性の保全の場としてプラウに注目し、地域の生物多様性の貯蔵地としての役割について明らかにする。プラウは集落・場所によって、大きさ、断片化の程度、過去の伐採履歴が異なっており、これらの要因が種多様性に影響を与えている可能性がある。そこで、プラウの種多様性を調査し、前述の要因がプラウの種多様性に影響を与えているかを検討した。

調査対象としたのは、マレーシア、サラワク州の断片林化景観(200km2)である。この地域に存在する8か所のプラウに0.25haの大きさの調査区を計16個設置し、樹木の種多様性の調査を行った。調査区の中に出現する胸高直径10cm以上のすべての樹木の大きさ・種を記録した。結果、断片した森林であるにもかかわらず全部で550種を超える樹木種が見つかり、これは原生林と同等のレベルであった。次に、GIS解析により対象地域の過去40年の土地利用を森林・二次林・裸地に分類し、変遷を明らかにした。プロットの現在の種多様性に、森林面積、土地利用履歴・パタン、孤立度などの要因が影響するかについて統計解析を行った。発表では、その結果を示し、プラウの保全のための条件を議論したい。


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