| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-376 (Poster presentation)

キンラン属の移植手法に関する実験的検討

*米村惣太郎,渡部陽介(清水建設),塩見直希,奈良一秀,清家剛,福田健二,徳永朋祥(東京大・新領域),丹下健(東京大・農),横張真(東京大・工)

キンラン属は開発事業における移植需要が高く、多くの移植が実施されているが、活着率は低く、ほとんどの場合、数年内に減少・消失すると言われている。代償措置としての移植の確実性を高めるには、キンラン属の生育に必要な菌根菌と樹木との三者共生関係の再構築が可能な移植適地の選定に加え、実際の移植作業において、どのような移植手法が有効であるかを明らかにすることが重要である。

そこで今回、土地造成に伴う移植の実施に際し、移植時期、掘取・運搬方法、移植後の処理の影響について検討した。移植時期は冬季と夏季とし、2014年2月、6月に実施した。掘取・運搬方法では、株と生育地土壌を一体的に移植する容器として、冬季はボイド管を用いたが、夏季はそれに加え、土壌の固定状況による影響を見るためにビニルポット、ビニル袋を用いた。移植後の処理は、夏季の移植株の蒸散抑制を狙い、地上部の全切除、最下葉を1枚残し切除、無処理とした。

移植当年及び翌年の5月に移植株の出芽状況を調査した。その結果、ボイド管を用いた場合、キンラン、ギンランともに移植時期による出芽率に有意差はなかったが、冬季のほうが高い傾向が見られた。また掘取・運搬方法ではギンランでは有意差はなかったが、キンランではボイド管で有意に出芽率が高かった。移植後の処理では両種とも無処理の場合に高い出芽率が得られた。何れも個体へのストレスが小さいほうが出芽率が高くなる傾向が伺われた。これらはまだ初期の結果であり、また移植後、休眠株の存在が確認されたことから、今後、種の休眠特性や寿命などを考慮に入れて、長期的なモニタリングを行い、適切な移植方法や活着の判断方法について検討する予定である。


日本生態学会