| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-382 (Poster presentation)

浸水災害ハザードと生物多様性は関係しているのか? ―福井県三方五湖流域における検証―

内田圭・篠原直登・吉田丈人(東大院・総合文化)

近年、生態系機能を生かした防災減災「Eco-DRR」など、生態系やGreen Infrastructureの持つ減災機能が注目されている。これまでは、生態系を構造として捉えその価値を評価してきたが、これからは調整サービス以外の価値を付加して評価していく必要がある。生態系は高い生物多様性を包括し、それらは人間にとって重要な基盤として機能しているが、生物多様性と災害ハザードおよび人間活動(土地利用)の関係を検証した例はほとんどない。

本研究は、「浸水災害ハザードと生物多様性に関係があるのか」という問いを立て、福井県三方五湖流域の水田地帯をモデルケースとして検証を実施した。攪乱および土地利用形態が生物多様性に影響していることは明らかであるが、自然攪乱が強い土地ほど減災を目的とした人為改変が強いと考えられる。よって、現在の災害ハザードと土地利用さらには生物多様性の関係を整理することは、Green Infrastructureの分布やそれらが持つ価値を検証するための重要な基礎情報となる。

ハス川流域を500mメッシュに区切り、メッシュごとに、生物多様性、土地利用面積、ハザード面積を算出し、それぞれの関係を解析した。結果から、災害ハザード面積が多い場所では陸上植物の多様性が低い傾向にあった。一方で、絶滅危惧種に指定されているダルマガエルの個体数は災害ハザード面積と正の相関関係にあった。本結果は、減災を目的とした基盤整備に対して、生物多様性を組み込みこんだ政策・意思決定のための非常に重要な基礎情報となるであろう。

本研究は、環境省の環境研究総合推進費により実施された。


日本生態学会