| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-397 (Poster presentation)

海洋島のメタ生態系モデル:土壌環境の不均質性の導入

*吉田 勝彦(国立環境研・生物), 畑 憲治(首都大院・理工・生命),川上 和人(森林総研・野生動物),平舘 俊太郎(農環研・生物多様性),大澤 剛士(農環研・農業環境インベントリーセンター),可知 直毅(首都大院・理工・生命)

面積の限られた海洋島であっても、島の中の環境は一様ではなく、場所毎の環境不均質性がある。このような環境不均質性は生物の分布に影響を与えている。これは現在小笠原諸島で行われている外来生物駆除事業後の生態系変化を予測する上で、避けることができない要素である。環境不均質性の中でも、土壌環境の不均質性は植物の生育に非常に強く影響するので、生態系変化を予測するためには重要な要素となる。そこで本研究では、昨年度までに開発した海洋島のメタ生態系モデルに土壌環境の不均質性を導入することを試みた。今回は土壌環境の中でも特に土壌pHと栄養塩量に注目した。これまでの研究によると、小笠原諸島において未撹乱の土壌では、土壌表層数cmまでは栄養塩含量が比較的豊富で、土壌pHは中性に近いものが多い。また、土壌の深い部分では、栄養塩含量が低く貧栄養的であり、土壌は多くの植物の生育に適さないほど強い酸性を示すことが報告されている。傾斜地などにおいて土壌が侵食されると、このような植物の生育に適さない下層土が露出することになる。また、移動してきた貧栄養かつ強酸性の下層土に土壌表層が覆われることも考えられる。このようなプロセスで土壌環境が変化すると、その場所に生育する植物の種類も変化しうるし、新たな植物の定着にも強く影響すると考えられる。今回の発表では、このようなプロセスで変化する土壌環境に対して、どのような生態系が構築されるのか、また、外来生物駆除後に生態系がどのように変化していくのかについてシミュレーションした結果を報告する。


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