| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-421 (Poster presentation)

特定外来生物ツマアカスズメバチの生態的特性にもとづいた防除戦略

*岸茂樹, 五箇公一(国立環境研)

ツマアカスズメバチ(以下ツマアカ)は2012年ごろに日本の長崎県対馬に侵入し、現在急速に分布を拡大している。2015年には福岡県北九州市への侵入が確認されたため、今後、九州や本州にも分布を拡大することが懸念されている。本種はすでに人への刺傷害が生じており、また生態系に大きな影響を与えるおそれもあることから、2015年に特定外来生物に指定された。本種を効果的に防除する手法の開発が求められている。そこで我々は化学的防除手法の開発に着手するとともに、これまでに得られたデータに基づいて効果的な防除戦略を検討した。ツマアカの分布特性を確認するために、2年間に亘る駆除巣の位置情報を解析した結果、北部から南部に分布を急速に拡大していることがわかった。さらに、分布の前線では密度が大きく増加し、次年には密度がやや減少する傾向がみられた。したがってツマアカの化学的防除は、前線の密度を低下させ、南部から北部へと分布の前線を後退させる形で進めることが効果的と考えられた。次に島内のトラップ調査で得られた在来スズメバチ類とツマアカの個体数を比較した結果、オオスズメバチ密度とツマアカ密度の間に正の相関があることが示された。このことからツマアカとオオスズメバチの間には生息適地の類似性がありながら競合していないことが示唆された。今後の分布推定においては、オオスズメバチの分布情報の活用が期待されるとともに、本土内においてツマアカの生息適地が広く分布することも示唆された。


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