| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-423 (Poster presentation)

ヌートリア対策の成果と課題―捕獲開始後13年目の状況から

森生枝(岡山県自然保護センター)

ヌートリアMyocastor coypusは南米原産の半水棲齧歯類で,植物の根や地下茎などを主食とする。ヌートリアは岡山県自然保護センターの野外施設(100ha)においても池を中心にして定着しており,ヒシ,マコモ,ミクリなどを中心とした水生植物の生育に影響を与えている。また,最近では底生動物ドブガイ類をも相当数捕食することがわかっている。こうした状況を踏まえ,センターでは,2003年以降,捕獲とモニタリングを繰り返す形で対策を実施してきた。すなわち,2003年から2013年までに2634わな日の捕獲努力量を費やし,133頭のヌートリアを除去した。なお,捕獲されたメス成獣33頭のうち24頭(73%)に目視可能な胎児が見られ,かつ妊娠個体は1年を通して確認されたことから,ヌートリアの高い繁殖能力がうかがえた。

ヌートリアの密度指標としてとりあげた① 直接観察による目撃個体数,②糞の数,③特に被食を受けやすい水生植物の生育状況については次の通りであった。① 10頭(2003年)から1頭(2014年と2015年の2年間を通じて)に減少した。②62(2004年)から1(2015年)に減少した。③ 一年生植物ヒシは2003年に実施したヌートリア捕獲直後からしだいに増えて元の状態にまで回復した。また,多年生植物マコモも2004年には水面上にほとんど姿が見えない状態であったが,2008年以降は徐々に生育面積を増加させた。さらに,多年生植物ミクリも2005年以降,徐々に生育面積を増加させた。

これらのことから,捕獲開始から13年を経て,ヌートリアの密度は一定程度抑制されているものと考えられた。少ない労力でヌートリアの低密度化と水生植物の回復を実現した一事例として紹介する。


日本生態学会