| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-471 (Poster presentation)

生態学における社会コミュニケーション──理論と実践

多田満(国立環境研)

東日本大震災と福島第一原発事故(2011年)を契機に、科学者(研究者)は「市民との対話と交流に積極的に参加する」こと、さらに「社会に向き合う科学」が求められている(社会とのコミュニケーション)。一方で、地球環境問題に対応するため、研究者と実社会の関係主体が協働する(ともに「学び合う」)研究(トランスディシプリナリー・リサーチ)が世界的規模で議論され、実践されようとしている(Future Earth)。このような社会コミュニケーション(科学知と市民の生活知やローカルナレッジ、現場知の交流)により市民の理解と共感をえることで、環境問題などの社会的な課題に対して市民が自主的に判断し行動するには、その過程において研究者は、科学的な成果だけでなく人文的教養(人文科学)や生活感覚(以上、社会リテラシー)がもとめられる。ゆえに、研究者は科学性だけでなく人間・社会性を通して市民の理解と共感をえるものと考えられる。

そこで本研究では、まず、研究者の社会コミュニケーションの必要性を述べて、「自然」「社会」「生命」のキーワードをもとに理論面から検討をおこなった。つぎに、自然科学(生態学)と人文科学(文学)の文理協働による「対話と協働」「経験の向上」を目標とした社会コミュニケーションのツール「環境カフェ」(2015年5月以降)の実践についてその概要を述べる。その実践例として、生態学とレイチェル・カーソンの『海辺』(1955年)などの文学を通した「環境カフェ」(2015年10月11日、筑波大・下田臨海実験セ)を開催した。さらに、生態学の科学論文をもとに社会コミュニケーションのための文理融合のツールとして、新たな文学(科学+文学=)「科学詩」の作成についても検討をおこなった。


日本生態学会