| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T04-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

趣旨説明:大規模撹乱の生態学的帰結についての理解の意義と現状

野田隆史(北大・地球環境)

攪乱の生態系への影響を理解し予測するためには、当該イベントの時空間的特性(つまり攪乱レジーム)とその生態学的帰結(直接的インパクトとその後の回復過程)についての知識が必要であるが、それらの情報は稀にしか生じない大規模撹乱では極めて断片的かつ制限されたものとなるだろう。このような状況下で、どうすれば大規模撹乱の生態学的影響の理解を深化させることができるだろうか。本企画集会では東北地方太平洋沖地震を具体例に議論したい。

巨大地震・火山噴火・極端な異常気象といった攪乱は、稀にしか発生しないがその影響は広汎な範囲に及ぶ。このような攪乱の生態学的帰結については、ごく基本的な疑問も残されたままである。第一に、直接的なインパクト(ダメージ)は他の攪乱と比べてどの程度大きいのか? 第二に、群集はどのように回復するのか?大スケール攪乱では、局所撹乱とは異なり種プールや広域移動生物へ影響が及ぶので、その回復過程は局所攪乱後とは大きく異なるかもしれない。第三に、スケールの異なる攪乱にどのように重層的に作用するのか?例えば大スケール攪乱の影響がメタ群集に長く残るならば局所攪乱後の遷移はその影響を受けて変化するはずである。

我々は、三陸沿岸での広域長期モニタリングを通し、巨大地震が岩礁潮間帯固着生物群集にもたらした直接的インパクトとその後の回復過程について研究を進めてきた。本企画集会では、最初に、巨大地震の発生のメカニズムや環境への作用および発生の時空間的特性について専門家に説明して戴く。続いて巨大地震が岩礁潮間帯固着生物群集にもたらした生態学的帰結について、先に述べた疑問点について現時点で明らかになっていることを紹介する。


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