| 要旨トップ | ESJ63 企画集会 一覧 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T14 -- 3月22日 9:30-11:30 RoomH

「空間」からクローナル植物を捉え直す:タケ・ササ類の生態と進化

企画者: 立木佑弥 (九大・理), 富松裕 (山形大・理)

有性生殖に加えて栄養生殖を行うクローナル植物は、森林の林床や草原、湿原などにおいて優占し、侵略的外来種にも多く見られる。クローナル植物の効率的な分布拡大を可能にする要因の一つとして、地下茎や枝によって連結したラメット間で資源を転流する生理的統合がある。生理的統合は、不均質に分布する資源環境に対する適応だと考えられている。

一方、地下茎などの伸長様式はクローンの空間分布を規定するため、競争や繁殖に関わる形質とも互いに影響を及ぼし合いながら進化することが期待される。例えば、地下茎が短い「ファランクス型」は、周囲に同一クローンのラメットを密に配置することで持続性を高められるが、自家受精が生じやすくなるため、大きなクローンを発達させるコストは大きい。一方、地下茎を長く伸ばす「ゲリラ型」は繁殖におけるコストが比較的小さく、広範囲で資源を探索できるが、分布範囲に不適な環境をも含む可能性があるだろう。

熱帯から温帯にわたって広く分布するタケ・ササ類には、地下茎の伸長様式や開花周期に種間で大きな変異があり比較生態学研究の良い材料である。また、一回繁殖性の植物で、しばしば広域にわたって同調開花・枯死するため、枯死後の更新過程は分布拡大に関わる問題について検証する良い機会となりうる。本集会では、タケ・ササ類の個体群動態に注目して理論と実証の両面から話題を提供し、不均質な資源環境下における空間の獲得戦略や生活史形質の進化について議論したい。

[T14-1] 地下茎伸長が開花周期を決める!? ササ・タケ類の空間明示的モデリング  立木佑弥 (九大・理)

[T14-2] 半島マレーシア熱帯丘陵林におけるタケ類の株内ramet動態とgenetサイズ分布の推定  *藤沼潤一(北大・環境), 甲山隆司(北大・環境)

[T14-3] 光環境が不均質な林床におけるチシマザサの長期的動態  *富松裕(山形大・理), 松尾歩 (秋田県大・生物資源), 陶山佳久(東北大・農), 蒔田明史(秋田県大・生物資源)

[T14-4] Oから始まったクローナル植物の「空間」構造研究  鈴木準一郎(首都大・理工・生命)


日本生態学会