| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T16-7 (Lecture in Symposium/Workshop)

気候変動が土壌ー植物系のもつ生態系機能へ及ぼす影響 - 大型土壌動物を介したプロセス

小林真(北大 FSC), 金子信博(横浜国大 環境情報)

気温上昇などの気候変動が森林の一次生産を担う樹木へ及ぼす影響が懸念されている。一方、気温上昇が直接的に樹木の生理活性へ及ぼす影響に比べ、樹木と物質循環を介して関係する土壌生物を介した間接的な影響経路は複雑で、メカニズムについて不明な点が多い。演者らは、特にデトリタス食性の大型土壌動物であるミミズやヤスデを材料とし、これらの動物が気温上昇へ示す反応が窒素循環を介して樹木へ及ぼす影響について研究を進めている。これまでの研究から、気温上昇が樹木の実生に及ぼす影響について、直接的な経路よりも大型土壌動物を介した間接的な経路の方が影響が大きい場合がある事がわかった。また、気温上昇時、大型土壌動物の種によって餌の摂食量や種類(有機物に富む鉱質土壌か落葉)を変化させること、そうした摂食行動の変化は土壌の窒素循環へ影響する事が明らかになった。一方、同種の大型土壌動物であっても、得られる餌の種類によって気温上昇時に摂食量を変化させる程度は異なり、結果として土壌の窒素循環や、窒素を利用する樹木の成長に違いをもたらす事も実験的に示された。これらの成果は「デトリタス食性の大型土壌動物」という、他の分野の研究者には比較的小さくみえる分類群であっても、気温上昇に対して実に多様な反応を示すことや、その複雑な反応が将来環境における樹木の成長を予想する上で無視できない存在であることを示唆している。


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