| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T19-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

津波被害を受けた岩手の干潟における底生動物群集の回復状況

*木下今日子(岩手大学・三陸復興),松政正俊(岩手医科大学・生物)

東日本大震災で発生した巨大津波は岩手県の沿岸干潟を大きく攪乱し、そこに生息する底生生物に影響を及ぼした。震災の影響を明らかにするために、岩手県の主要な河口干潟(津軽石川、織笠川、鵜住居川)において、2011年(鵜住居川は2012年)から底生生物の調査を年に1回実施した。2011年に見られた底生生物は少なかったが、2012年以降は出現種が増加した。2015年までの調査の結果、震災前に記録された種のおよそ7割が確認されたことから、底生生物の多くは震災の影響から回復しつつあると推測された。その一方で、復興工事にともない、沿岸環境は新たなインパクトを受けることが懸念された。人為的な環境改変が底生生物に及ぼす影響を明らかにするために、事前の状況を把握しておくことはきわめて重要である。そこで、岩手県の干潟のモデル地域として織笠川を選定し、底生生物群集の定量調査を2013年からほぼ毎月実施した。

織笠川は県内有数の潮干狩場で、春になると「アサリまつり」というイベントが開催されていたが、震災時の津波と地盤沈下の影響で干潟の面積が著しく減少したことから、震災以降は無期限中止となっている。本講演では、アサリを含めた貝類(巻貝・二枚貝)群集の2013年から2015年の変遷について紹介する。全ての調査地点においてアサリが優占したが、その密度変化は調査地点によって異なった。アサリの密度変化の要因のひとつとして、貝食性の外来種の増加による影響が示唆された。


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