| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-04  (Oral presentation)

明るい林道は植林地と天然林のチョウの多様性を高める

*大脇淳, 前田沙希, 中野隆志, 北原正彦(山梨県富士山科学研究所)

植林地が多い日本において、植林地での生物多様性の保全は重要な課題の一つである。しかし、どうしたら植林地で生物多様性を高められるか、生物多様性に影響を与えそうな説明変数とともに調査した研究例は日本では少ない。本研究では、富士北麓において、様々な植林地や天然林でチョウ群集と環境要因を調査し、どのような要因がチョウの多様性と関連しているか解析した。
富士北麓の5タイプの森林(アカマツ林4、カラマツ植林4、シラビソ植林2、針広混交天然林2、落葉広葉樹林4)に合計16プロットを設置し、チョウは2015年6~10月に6回、2016年4~5月に2回(合計8回)、200mのトランセクト上で観察された種と個体数を記録した。各プロットでは毎木調査、花の調査、植物相の調査、全天写真の撮影も実施し、高木密度、低木密度、高木胸高直径、樹木種数、落葉樹率、花の種数、食草種数、開空度、標高を説明変数として得た。
まず、チョウの資源である食草種数と花の種数を応答変数、高木密度、低木密度、高木胸高直径、落葉樹率、開空度、標高を説明変数としてAICに基づいてモデル選択したところ、食草種数は高木密度と負の関係、花の種数は落葉樹率および開空度と正の関係が見られた。次に、チョウの種数および個体数を応答変数、高木密度、低木密度、高木胸高直径、落葉樹率、開空度、標高、食草種数を説明変数としてモデル選択を行った。その結果、チョウの種数、個体数ともに、開空度および食草種数と強い正の関係が見られた。ただし、年1化の木本食のチョウの種数は落葉広葉樹林で多かった。
以上より、落葉広葉樹林は年1化のチョウの保全に重要であるが、植林地でも開空度が高ければ、チョウの資源である花の種数が増加し、チョウの種数・個体数も増加した。植林地においては、未舗装の林道沿いに木を植えない場所を設けることでチョウの多様性を高めることが可能と思われる。


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