| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-06  (Oral presentation)

都市近郊林の再生過程における種構成の長期変化の特徴

*島田和則, 勝木俊雄, 大中みちる, 岩本宏二郎(森林総合研究所多摩森林科学園)

都市近郊林の多くを占める針葉樹人工林において、気象害を受けてから放置後、広葉樹二次林として自然再生していった林分の、植生の経年変化を20年以上継続調査した。広葉樹二次林として林齢の異なる2箇所の調査区の結果をあわせて、攪乱後0年から30年までの多様性や種構成の長期変化について検討した。
全体の種数は、気象害を受けた直後の数年間は急増したが、以降は減少し続け、20年くらいには攪乱前の種数となった。さらに、種構成の経年変化を出現種の生態的特徴から分析するために、出現種を主な生育環境で区分した。生育環境の区分に先だって、まず調査地には本来自然に生育しない外来種(国内外来・栽培・植栽種を含む)を分けた。残りの在来種について、この地域の自然林構成要素と考えられる照葉樹林構成種(Hattori et. al.,2004)を区分し、その他の種を奥田(1997)の生育環境区分をもとにタイプ分けし分析した。照葉樹林構成種の種数は再生初期から急激な変動はなく、調査期間を通じて微増した。夏緑樹林タイプの種は、調査期間を通じて大きな変動は少なかった。人里タイプ、草原タイプ、雑木林タイプの種は再生初期に急増し、その後減少し続けた。
このように、常緑広葉樹林域では攪乱によって、人里タイプや草原タイプなど非森林生の種と雑木林タイプの種の一時的な増加によって再生初期では種数が多くなるが、時間をおいてこれらの種数が減じていき、20から30年で元の構成比に戻っていった。雑木林タイプ以外の森林生の種は変動が少なく、特に照葉樹林構成種は長期的にはゆっくりと増加していくと考えられた。本来の生育環境の違いで攪乱による反応が異なることは、多様性保全のための森林管理を行う場合に考慮する必要があると考えられた。


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