| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-08  (Oral presentation)

種内コミュニケーションを利用したオオヒキガエルの防除法

*原村隆司(京都大学白眉センター, 京都大学フィールド科学教育研究センター), Michael Crossland(The University of Sydney), Rick Shine(The University of Sydney)

オオヒキガエル(Rhinella marina)は、日本を含め世界中で在来種や生態系に悪影響を与えている特定外来種である。オオヒキガエルの種内コミュニケーションや種内競争を利用したオオヒキガエルの防除法について紹介する。両生類(カエル)は雄が雌を呼ぶために鳴き(メイトコール)、ヒキガエルでは、雌は周波数の低いコールを好むことが知られている。また、雄個体では、コーラス(沢山の雄が鳴く様子)により引き寄せられることが分かっていた。そこで、人工的に周波数の低いメイトコールやコーラスを作成することで、オオヒキガエルをより効率的に集められるかを検証した。雌はより低い周波数のメイトコールに反応し、雄ではコーラスにより反応した。このことから、オオヒキガエル防除では、メイトコールの使い分けによって選択的に雌雄を捕獲できる可能性が示唆された。次に、種内競争によるオオヒキガエル防除の可能性についても紹介する。オオヒキガエルのオタマジャクシ間で共食い行動が見られ、大きい個体は小さな個体を捕食し、大きなオタマジャクシは小さなオタマジャクシの成長を抑制する現象が観察された。オオヒキガエルにおいて、小さなオタマジャクシは小さな変態個体にしかなれず、小さな変態個体はより死に易い。この抑制には何らかの化学物質(フェロモン)が影響していることが示唆されたが、詳細は現時点ではまだ分かっていない。オタマジャクシの成長を抑制するこの化学物質の解明は、オオヒキガエルの新たな防除法として利用できる可能性がある。
 種内コミュニケーションや種内競争(特にフェロモンなど)は、基本的にその種にしか作用しないため、紹介したオオヒキガエルの防除法は、在来種などに生態系に悪影響を与えない手法であると思われる。


日本生態学会