| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) E01-01  (Oral presentation)

紫外線と動物行動の関わり

*浅間茂(千葉生態系研)

 ほ乳類は紫外線が見みえないが、他の動物は紫外線が見える。紫外線は動物の行動にいろいろ関わっている。ニセネッタイスズメダイは眼から鰓にかけて、紫外線反射により複雑な斑点が見え、それで個体識別しているという報告があった(2015.Ulrike Siebeck)。非常に似ているネッタイスズメダイの紫外線写真を撮影した所、逆に紫外線を吸収し、複雑な斑点が現れた。ニセネッタイスズメダイと同様に、顔で個体識別していると思われる。この小さく黄色でよく似ている珊瑚礁に生息するスズメダイ同士は、互いに紫外線により別種であることを、容易に見分けていることが分かる。
 次にジャンボタニシと言われるスクミリンゴガイの卵塊を撮影した所、強く紫外線を反射した。このピンク色をした卵塊は水中でなく、用水路のコンクリート壁や稲の根元に産み付けられる。これは捕食者である鳥などに毒があることを、紫外線色とピンク色で目立たせていると思われる。学習能力の高い鳥は一度食べれば、二度とこの毒のある目立つ卵塊は食べないであろう。このピンク色は毒と結びついたカロチノイドで、稚貝が卵塊から出る前に取り込み、それらを消化し、栄養源としている。卵塊から出る直前には、卵塊の表面にはカロチノイドが見られなくなり、中の稚貝が真っ赤な色となっている。
 最後にカワトンボの縄張りについて述べる。カワトンボの雄の銀白色の部分は、紫外線を強く反射する。別の雄が縄張りに入ってきた時には、追い払う。雄の雌型カワトンボは、紫外線反射がそう強くはない。その結果、執拗な追い払いは見られないようである。そのため縄張り近くに潜み、機会を待つことができる。紫外線反射の強い雄ほど、良い場所に縄張りを陣取っている。また紫外線反射が強いことは、体内の温度が高温になることから守っている。


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