| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-08  (Oral presentation)

樹液流計測が変える森林成長の観測

*宮沢良行(University of Hawaii at Manoa), 石田清(弘前大学), Giambelluca, Thomas(University of Hawaii at Manoa)

森林の成長についての数多くの研究が、様々な環境や森林で実施されてきた。こうした研究は変化する成長速度を調べることで、これまでの研究は変動する環境が成長に及ぼす仕組みを解明し、その予測に取り組んできた。こうした研究は毎木調査を核とした観測を実施することで、年間、あるいはそれ以上の長期の成長速度の変化を観測してきた。成長の変動は短期でありながら強力な環境変動により引き起こされることも多いが、間隔の長い観測ではそうした短期の現象を捕捉し、影響を評価することは難しい。調査地の多くが遠隔地にあり頻繁な計測が難しいこと、また成長に直結する指標を観測できる技術の多くが高額でその運用条件が厳しい、または長期の自動観測に適さないことが、その原因にある。こうした中、果樹園芸や水文学で発達した樹液流計測は、光合成と密接に関係する蒸散を連続観測できる技術であり、上記の困難を克服する技術である。樹液流計測を成長の観測技術として用いるには、3つの項目:計測値の絶対値の信頼性、環境変動への光合成の応答を把握する手段・指標としての信頼性、そして長期観測に不可欠な観測の維持の実現可能性、の検証が不可欠である。樹液流観測により光合成速度またはその代替値が自動観測されるようになれば、毎木調査で取りこぼされがちな短期の環境変動が成長に及ぼす影響をくみ取り、今後予想される環境変動下での成長についてより実態に即した予想をすることが可能となるだろう。本発表では安価に自作可能な樹液流センサー二種類および得られたデータを基に、上記3つの項目に注目して、成長速度の観測技術としての有用性を議論する。


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