| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-02  (Oral presentation)

グッピーにおいてオプシンの遺伝子多型と発現量変化が光感受性とメスの配偶者選好性に与える影響

*酒井祐輔(東北大学・生命), 大槻朝(東北大学・生命), 笠木聡(東京大学・新領域), 河村正二(東京大学・新領域), 河田雅圭(東北大学・生命)

淡水性熱帯魚のグッピーは、オスの体色に種内多様性があり、これは生物において見られる表現型多様性の中でも最も極端な例として知られている。オスの体色の多様性の進化には、メスの多様な配偶者選好性による性選択圧が重要であると考えられ、実際にメスの配偶者選好性が集団間および集団内の個体間で異なることが報告されている。また、グッピーにおいては色覚に多様性があることが示唆されており、メスの配偶者選好性が色覚の多様性の副産物として生じているという仮説が提唱されてきた。しかし、色覚の多様性が生じるメカニズムや色覚の変化がメスの配偶者選好性に与える影響は明らかになっておらず、仮説の実証には至っていない。本研究では、視細胞内の光センサーである視物質を構成するオプシンタンパク質に注目し、オプシン遺伝子の配列多型および遺伝子発現量の変化が個体レベルでの色覚およびメスの配偶者選好性に与える影響を検証した。個体のオプシン遺伝子発現量は、オプシンの遺伝子型と発育時の光環境の両方の影響を受けることが示され、遺伝子型と光環境の相互作用によって多様なオプシン遺伝子発現パターンを示すことが明らかになった。また、こうしたオプシン遺伝子の発現量変化は行動レベルで個体の光感受性に影響を与えていた。さらに、複数のオプシン遺伝子の発現量が高いメスほどオスの特定の体色に対して強い反応を示すことが明らかとなった。これら一連の研究によって、遺伝的および光環境応答的に生じるオプシン遺伝子の発現量変化が多様な色覚を実現させ、さらにそれがメスの配偶者選好性の多様性を生み出している可能性が示唆された。


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