| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-12  (Oral presentation)

ディープラーニングと逐次ベイズフィルタを用いた動画像中のニホンザルの個体追跡

*上野将敬(大阪大学大学院 人間科学研究科), 寺田和憲(岐阜大学 工学部), 加畑亮輔(岐阜大学 工学部), 林英誉(岐阜大学 工学部), 山田一憲(大阪大学大学院 人間科学研究科)

 ニホンザルなどの霊長類には、その行動パターンに一頭一頭の個体差が見られる。霊長類の行動を研究するためには、長い時間をかけて繰り返し個体を観察することによって、個体識別を行うことが必要となる。また、霊長類の個体識別を行えれば、ニホンザルなどの獣害に対して、より有効な対策を行えるだろう。そこで本研究では、霊長類の個体識別を瞬時に行うことのできる装置の開発を目指し、サルの顔画像から個体識別を行うプログラムを作成し、その有効性を検討した。
 岡山県真庭市神庭の滝自然公園付近に生息する勝山ニホンザル集団の画像に加え、兵庫県洲本市淡路島ニホンザル集団、インターネット上のニホンザル画像をプログラムの作成に用いた。ベイズの定理に基づいて逐次に状態推定を行うパーティクルフィルタと抽象化能力に優れるディープラーニングを組み合わせ、動画像中のニホンザルの追跡と個体識別を行うプログラムを開発した。結果として、このプログラムによって、勝山ニホンザル集団における4歳齢以上の66個体に関して、頑健な追跡が可能であることが確認されたが,個体識別には課題があることが分かった。この追跡,個体識別プログラムは、野生霊長類研究や猿害対策を行うための画期的な手段となるだけではなく、野猿公苑や動物園といった、ニホンザルが関わる商業施設の価値を高めることができると期待される。


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