| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-A-026  (Poster presentation)

岩礁潮間帯固着生物群集における共存機構:緯度と高度による変化

*立花道草(北大院・環境), 奥田武弘(水研教育機構・国際水研), 堀正和(水研教育機構・瀬戸内海区), 仲岡雅裕(北大・厚岸), 山本智子(鹿大・水産), 野田隆史(北大・地球環境)

共通の資源を利用する多種間で働く共存メカニズムは多岐にわたり、それらが同時に働く状況もあるため、野外群集に適用できる最も現実的で有効な共存機構の評価方法は安定化メカニズム(種間競争よりも種内競争が強く働くこと)と等質化メカニズム(平均適応度の差が小さいこと)の相対強度を明らかにすることであろう。安定化メカニズムの等質化メカニズムに対する相対強度は環境ストレスが強くなるほど低下すると予想できることから、岩礁潮間帯でも岩潮潮間帯の海岸の高度と緯度によって安定化メカニズムの相対強度は変化すると予想される。なぜなら、海岸の高度の上昇は乾燥ストレスを増加させ、緯度の違いは低温あるいは高温ストレスの強度を変化させると考えられるからである。

そこで本研究では2003年~2010年に北海道東部から鹿児島県大隅半島にいたる太平洋沿岸の6地域(北海道東部、北海道南西部、三陸、房総、南紀、大隅)の30海岸、全144地点の岩礁潮間帯で実施された大規模センサスから得られた固着生物群集データを用い、安定化メカニズムの相対強度の指標となる種間の個体群動態の非同調性の強度とその統計学的有意性を算出し、それらの値の海岸の高度と緯度による変化を解析した。

その結果、種間の個体群動態の非同調性は海岸の高度とともに減少し、その傾向は地域によらず一貫していた。一方、種間の個体群動態の非同調性は中緯度で最も高く、海岸の高度の上昇に伴ってそのピークが見られる緯度は上昇した。
このほか、本発表では非同調な群集の割合の空間変異を引き起こした要因について解析した結果についても紹介する予定である。


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