| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-132  (Poster presentation)

里山の希少種ミヤマアカネの成虫が選好する草原構造の特性

*東川航(神戸大学大学院農学研究科昆虫多様性生態学研究室), 吉村真由美(森林総合研究所関西支所), 八木剛(兵庫県立人と自然の博物館), 前藤薫(神戸大学大学院農学研究科昆虫多様性生態学研究室)

ミヤマアカネはユーラシア大陸に広く分布するが、ヨーロッパの農地や緩流河川、また日本の里山において地域的に絶滅・減少している。特に日本国内では、本種は伝統的な水田や小川を主生息地とするが、農地水管理の近代化に伴って幼虫の生息環境が減少しており、それが本種の減少の原因の一つであるとされている(Higashikawa et al. 2016)。一方、本種成虫が水田の稲の低丈・水平な構造を好むという観察例があり(田口・渡辺 1985)、兵庫県のツルヨシ草原が優占する緩流河川の河川敷においても、定期的な草刈りによって水田に似た草原構造が保たれる場所に本種の生息が認められる場合が多い(八木ら 2006)。しかし、本種成虫による草原構造の選好性は実験的に確かめられておらず、十分に理解されていなかった。そこで、本研究では、本種成虫が上記の様な草原構造を選好すると予想し、それを確かめるための野外実験を行った。その結果、草丈を低く刈り揃えた実験処理区では、特に生殖活動が活発な午前中に、本種成虫の雌雄の個体数、交尾・産卵行動の観察数が無処理区と比べ有意に増加した。このことから、本種の保全のためには、遺伝的に草丈の揃う稲作水田では手入れが不要であるが、その周辺の用水路を囲む草原や緩流河川の河川敷において、定期的に草を刈り揃えることが非常に重要であることが示唆された。


日本生態学会