| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-140  (Poster presentation)

山中峠湿原における電気柵を用いた防除開始後のミズバショウ群落の変化

*臼田将之(岐阜大院応生), 安藤正規(岐阜大応生), 小澤一輝(林野庁関東森林管理局会津森林管理署)

 山中峠湿原(岐阜県高山市)のミズバショウ(Lysichiton camtschatcense)群落は、2006年以降ニホンジカやイノシシによる採食や掘り返しを受けて衰退したことが確認された。衰退した、ミズバショウ群落の回復を目指し、2011年より電気柵による防除が実施されている。その結果、ミズバショウ群落は緩やかに回復していることが確認された。一方で、2010年までに掘り返しを受けた場所のほとんどで、現在もミズバショウが回復する兆しは確認されず、またその要因は不明である。そこで本研究では、衰退したミズバショウ群落の保全に資することを目的に、防除開始後のミズバショウ群落の変化をモニタリングし、ミズバショウ被度(以下被度)の増加に係る環境要因について解析をおこなった。
 防除開始後のミズバショウ群落の変化を明らかにするために、2013年~2016年の毎年5月、7月、9月、11月に、湿原内の223地点において被度と水分状態を調べた。調査開始年および調査終了年において被度が最大であった、2013年7月~2016年5月にかけての各地点の被度の増加分を応答変数とし、各地点周辺の被度(以下周辺被度)および各地点の水分状態を説明変数として回帰分析をおこなった。
 モニタリングの結果、ミズバショウ被度は年々増加しており、全体として回復傾向にあることが示された。また、回帰分析の結果、周辺被度が高い場所や、乾ききらず、かつ水に浸かりきっていないような水分状態の場所で被度が増加しやすい傾向が示された。一方、掘り返された場所は、被度が低下して水がたまりやすくなり、ミズバショウが回復しにくいと考えられた。


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