| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-D-155  (Poster presentation)

三峰川水系における希少種カワラバッタの生息状況と立地環境との関係および食性に関する研究

*奥村真由(信州大学 農学部), 大窪久美子(信州大学 学術研究院農学系)

河川の砂礫地に生息するカワラバッタは、生息地の減少により全国で姿を消している。長野県南部の三峰川水系でも砂礫河原環境の減少が懸念されており、本研究では本種の保全策を検討するため、生息状況と立地環境との関係及び食性を解明することを目的とした。調査は最上流の河川敷1地域(A)及び、三峰川と天竜川合流地点から2km、500m、300m上流の河川敷3地点(B~D)の計4地域で実施した。調査プロットは5m方形区を10個ずつ一列に配置し、3種類の調査を行った。群集調査はルッキング法で成虫と幼虫別に個体数をカウントした。次に、植生調査は植被率と各出現種の被度、群度、自然高等を測定した。立地環境調査は地表面の破砕物を8種類に分類し、各割合を測定した。また食性実験では、Aで採集したカワラバッタを24時間絶食させた後、選定した植物種を一定量ずつ与えた。24時間後に植物を回収し残重量の乾重を測定した。全地域でカワラバッタの幼虫は48個体、成虫は88個体確認された。幼虫・成虫共にAで最も個体数が多かったが、Bでは成虫は確認されなかった。植生ではAはカワラニガナ等の河原固有植物が優占した。Bは外来植物の優占度が高く、河原固有植物の被度は著しく低かった。CとDでは外来植物と河原固有植物の両者の優占が確認された。立地環境では全地域中、Aでは礫、Dでは砂の割合が最も高かった。食性実験では河原固有植物のカワラニガナとカワラヨモギの被食量が多かった。Aは群落の植被率は低いが、餌資源である河原固有植物は優占し、礫の割合が高いため、カワラバッタの生息や繁殖に最も適した環境であると考えられた。一方、Bは外来植物が多く植被率が高いため、本種の生息地として最も適さないと考えられた。本種の保全策として、餌資源である河原固有植物を保全するため、生育適地である砂礫質河原を維持し、また外来植物の除去や侵入防止が必要である。


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