| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-E-170  (Poster presentation)

野洲川上流部におけるアジメドジョウの行動と河床利用

*鶴谷峻之(龍谷大・院・理工), 野村賢吾(龍谷大・院・理工), 山田純平(龍谷大・院・理工), 太田真人(龍谷大・里山研), 遊磨正秀(龍谷大・理工)

アジメドジョウNiwaella delicata (ドジョウ科、以下本種)は、河川の中・上流部にのみ生息している純淡水魚である。本種は一般的なドジョウ類とは異なり砂泥には潜らず礫の隙間に入り込む、主要な食物として礫の表面の付着藻類を摂餌するなど河床環境に依存した特異な行動をとる。生息地としてこのような行動がとれる環境が必要であるが、河川改修や伐採などによる土砂の流出によりそれらの環境が失われ、生息数の減少が報告されている。しかし、前述の特異な行動と環境要因の関係性については明らかとされていない。そこで本研究では、潜水調査を用いて河川中での行動の観察を行い、新たな観点のデータを得ることを目的とした。
 滋賀県野洲川の上流部において、平瀬、早瀬、淵を複数含む約200mを調査区画とし、無作為に1×1mのコドラートを設置し、潜水モニタリングと環境要因測定を行った。潜水目視により全長、行動を記録した。環境要因は、底層流速、水深、礫下間隙、粒度組成、河床状態を計測し、餌資源量として付着藻類を持ち帰り、ロレンツェン法を用いてクロロフィルa現存量を算出した。また、調査期間中の藻類の繁茂状況を鑑み、後日同調査地において藻類や礫下間隙を操作したコドラートを作成し、同様の調査を行った。 
 摂餌行動は餌資源量との間に有意な関係を見ることはできなかったが、これは調査期間中雨が非常に少なく藻類が河川全面に繁茂していたことによる影響が考えられる。潜行行動は未成魚と成魚において礫下間隙と有意な正の関係が認められ、また散布図に示したところ未成魚と成魚では使用していた間隙の大きさが異なる傾向が示唆された。また追加調査の結果、礫下間隙の有無よりも藻類の有無が本種の出現や行動に影響を及ぼしていることが明らかとなった。本種における行動の有無を決定する環境要因に関する知見は少なく、これは本種の保全をする上での新たな知見であると言える。


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