| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-G-240  (Poster presentation)

中山間地域の無居住化にともなう鳥類の群集構造の変化

*安積紗羅々(東京大学), 深澤圭太(国立環境研究所), 直輝直輝(東京大学), 宮下直(東京大学)

日本の中山間地域においては、多様な生物が生息する里山景観が維持されてきた。しかし現在すでに人口が減少する時代に突入し、それに伴う管理放棄により里山景観が失われつつある。無居住化が生物多様性に与える影響は、管理放棄が二次的な自然環境に生息する種に与える負の効果と、人間活動のインパクトがなくなることにより撹乱に耐性のない種が回復するという正の効果が考えられるが、どちらが卓越するかは状況に依存すると考えられる。
鳥類は生態系の中で比較的上位に位置し、無居住化に伴う景観変化の影響を強く受けると考えられる。しかし、種ごとに生態特性・生息環境が異なり、無居住化が与える影響は一様ではないと考えられる。広域においてどのような種特性をもった種が無居住化の負の影響・正の影響があるかを調べることは、今後人口減少が進行する日本において、どのような種が危機にさらされるか予測することにつながる。本研究では6月から8月にかけて、北海道から宮崎までの日本の様々な地域で、無居住化した集落と近隣の有人集落で鳥類の出現頻度を比較し管理放棄が鳥類各種に及ぼす影響を調べた。そして、種ごとの違いをよく説明できる種特性を明らかにした。解析には一般化線形混合モデルや階層ベイズモデルを用いた。
解析の結果、記録された53種類の鳥類のうち、無居住化によって出現頻度が増加したのは8種だったのに対し、減少したのは17種類と減少した種の方が多かった。市街地、耕作地、湿地・河川を生息環境とする種は無居住化の負の影響を受けやすかったのに対し、森林性の種は正の効果を受けやすい傾向があった。したがって、中山間地域の集落が無居住化すると従来生息していた鳥類がいなくなり、代わりに森林性の鳥類がよく出現するようになるということがわかった。また、食性についても無居住化による影響は異なった。本研究により、将来的に無居住化が進む中で、鳥類群集の変化の予測、保全に繋がる知見を得ることができた。


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