| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-I-281  (Poster presentation)

冷温帯の3林分(アカマツ林・カラマツ林・コナラ林)における葉リター収支の比較

*池田郁哉(早稲田大・院・先進理工), 安藤誠(早稲田大・教育), 横田祐人(早稲田大・教育), 墨野倉伸彦(早稲田大・院・先進理工), 鈴木庸平(早稲田大・院・先進理工), 小泉博(早稲田大・教育)

森林生態系は地球規模の炭素循環において大きな役割を担っている。森林生態系において土壌に蓄積される炭素の多くはリターに由来することから、リターの量と質が土壌有機物の蓄積過程に大きく影響を与える。このためリターに着目した研究は森林生態系の炭素循環プロセスを解明する上で重要である。土壌のリター蓄積量は供給と分解のバランス(リター収支)で決定されるが、これには常緑・落葉、針葉・広葉といった樹木の生活形が影響を及ぼすことが指摘されている。全リターの約70%を葉リターが占めることから、本研究では葉リターを対象に同一気候帯において3林分のリター収支の構成要素を比較することを目的とした。 調査は長野県軽井沢町の冷温帯アカマツ(常緑針葉樹)林・カラマツ(落葉針葉樹)林・コナラ(落葉広葉樹)林で2016年5~12月に行った。葉リターの蓄積を示す現存量及び、供給を示すフォール量と分解を示す呼吸量・溶脱量を測定し、その差から葉リター収支を算出した。現存量は葉リターを回収し測定した。フォール量はリタートラップ法を用いて測定した。呼吸量は土壌の一部を真砂土に入れ替え、全土壌呼吸量から葉リターを除いた土壌呼吸量の差で算出した。溶脱量はリターバッグの分解量と葉リター呼吸量の差から求めた。 アカマツ林・カラマツ林・コナラ林のフォール量はそれぞれ1.9・1.9・2.4(tC ha-1 yr-1)となり供給は広葉樹が多かった。溶脱量は57.3・36.3・71.2(mgC g-1 yr-1)、呼吸量は49.5・32.4・58.0(mgC g-1 yr-1)となり分解も広葉樹で多くなっていた。2016年12月時点の葉リターの現存量は1.3・1.9・1.0(tC ha-1 yr-1)となり、広葉樹ではリターの蓄積が少ないことが示唆された。広葉樹で葉リターの供給が多いにも関わらず蓄積が少ないことは高い分解性によって説明される。したがって針葉樹に比べ広葉樹のリターは分解されやすく、樹木の生活形の違いが葉リター収支に影響を与えることが明らかになった。


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