| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-296  (Poster presentation)

亜熱帯マングローブ林における粗大有機物の分解速度と環境要因の関係

*中野凌佑(神戸大・農学), 南埜幸也(神戸大・農学), 田邉舞(神戸大・院・農学), 大塚俊之(岐阜大・流圏セ), 藤嶽暢英(神戸大・院・農学), 友常満利(神戸大・院・農学)

 倒木や立枯木といった粗大有機物 (CWD) は、森林生態系の炭素収支に大きな影響を与える場合がある。また、一般にCWDの無機化速度 (RCWD) は温度、含水率といった環境要因に依存するが、潮汐の影響を受けるマングローブ林ではその環境応答性が異なると考えられる。本研究では、沖縄県石垣島吹通川流域のマングローブ林を対象に、温度と含水率の二つの環境要因に対するRCWDの応答性を明らかにするとともに、従属栄養生物呼吸 (RH) に対する寄与について議論した。
調査林から異なる条件 (サイズ、腐朽度、地表面からの高さ) の倒木に立枯木を加えた8種 (n=3) のCWDを選定した。室内において赤外線ガス分析機を用いて温度、含水率を変化させたRCWDを測定し、二つの環境要因に対する応答性を求めた。また野外において同様の方法でRCWDを測定し、さらに林内に設置された方形区 (80m×80m) におけるネクロマスの測定から年間RCWDを算出し、RHへの寄与率を推定した。
RCWDは温度、含水率に対してともに正の相関を示し、これらの傾向は陸域生態系と一致した。各条件について、サイズは小のものが顕著に応答し、単位重量あたりの表面積が大きいことに起因すると考えられた。腐朽度は低いものが顕著に応答せず、これは単位重量あたりの表面積が小さいほかに微生物量の多さも起因している考えらえた。地表面からの高さは高い位置に存在するものは顕著に応答せず、これは微生物の種類組成や量の違いに起因すると考えられた。年間RCWDは1.28 (MgC ha-1 yr-1) と算出され、RHに対する寄与率は44%と見積もられた。これは、陸域生態系における寄与率 (4~19%) と比較して高い値である。マングローブ林は年中高温多湿な気候下に存在するために年間RCWDが高く見積もられ、また嫌気的な土壌環境により土壌圏の従属栄養生物呼吸が低く見積もられるためである。


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