| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-326  (Poster presentation)

小笠原諸島におけるオガサワラヤモリの闘争、採餌行動のクローン間変異

*村上勇樹, 林文男(首都大学東京)

オガサワラヤモリは雌性単為生殖種で、形態的、遺伝的に異なる複数のクローンが報告されている。小笠原諸島には2種類のクローン(クローンA, C)が分布しており、これらのクローンは少なくとも6つの島で共存している。クローン間にニッチ分化が生じている可能性について、2クローンの闘争および採餌行動の観察を行った。小笠原諸島の父島で、オガサワラヤモリのクローンAを31個体、クローンCを10個体、および有性生殖種であるホオグロヤモリを19個体、無作為に島全体から捕獲した。各々の捕獲地点はGPS受信機を用いて記録し、捕獲した全ての個体の頭胴長の計測、尾や卵の有無の確認を行った。その後、父島にある小笠原研究施設にてランダムに組み合わせたペアを実験ケージ(60cm×60cm×40cm)に入れ、一か所の穴から継続的に餌(ミルワーム、シロアリ)を与えることによって、餌をめぐる闘争行動および採餌行動をビデオカメラで録画し、観察した。観察結果は勝敗表としてまとめ、各々の間の行動パターンの違いや優劣関係についてglmのロジットモデルおよびブラッドテリーモデルを用いて検討した。各々の捕獲地点を過去の捕獲データと合わせて解析すると、ホオグロヤモリとオガサワラヤモリのクローンAは人家等の人工的環境に多く、クローンCは森林内に多く分布することがわかった。また、行動観察の結果から、クローンAは頭胴長、捕獲地点、尾や卵の有無に関係なく、クローンA、C、ホオグロヤモリいずれに対しても威嚇、攻撃し、餌を取り合うのに対し、クローンCはいずれに対しても攻撃を仕掛けることはなく、闘争行動はほとんど観察されなかった。これらの結果から、クローン間およびホオグロヤモリとの間の餌をめぐる闘争によって微生息場所が分かれていると考えられた。


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