| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-K-344  (Poster presentation)

港北ニュータウン緑道内湿地におけるマイクロチップを用いたニホンアカガエルの行動追跡調査

*山崎慎(東京都市大学), 福添太志朗(東京都市大学), 山崎慶太(㈱竹中工務店), 横田樹広(東京都市大学)

 市街地内において残存した湿地環境は都市の水生生物の生息拠点となっているが、市街化に伴う分断化・乾燥化や、水系の人工化、外来種・移入種の優占等によって、自然状態での持続的な維持は困難であり、適切な生態系管理が求められる。特に湿地の分断化に対しては、市街地の緑地内の湿地および湿地間の環境の質を面的に把握し、そのネットワーク効果を評価することが必要となる。本研究では、横浜市都筑区港北ニュータウンのグリーンマトリクスシステム内で湿地環境が残存する徳生公園・茅ケ崎公園自然生態園の2地域において、生息が確認されているニホンアカガエルに注目し、生息状況とマイクロチップ(共立商会 IOL-125-AV1043)を使用した個体追跡調査により、その季節に応じた環境利用形態を把握することを目的とした。2016年4月から2017年1月末までの2地点計46回の調査で、徳生公園での確認地点数は計112匹、うちマイクロチップ埋め込み個体は18匹、再捕獲個体数は6匹であった。茅ヶ崎公園自然生態園では確認地点数は計74地点、うちマイクロチップ埋め込み個体が14匹、再捕獲個体が2匹であった。両地域において、夏冬ともに草丈50㎝以下の植被割合の高い地点での確認が多く、再捕獲個体については、いずれも埋め込み地点から10m圏内でのみ確認された。尾根のない斜面樹林に囲まれた孤立湿地である徳生公園では、行動圏は制限され、斜面上下方向の垂直的移動が主であるが、低地部の緑道内水路沿いまで利用範囲を広げていた。これに対し、里山林とセットになった茅ヶ崎公園自然生態園の湿地周辺では、水辺草地や斜面中腹部凹地の竹林など、より水平的な移動も含めた複合的な環境利用をしていると考えられた。季節に応じた下層草本植生の分布構造の変化が同種の環境利用に与える影響が大きく、緑道の断面方向を軸として、草地の質に配慮した植生管理が重要であると示唆された。


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