| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-M-355  (Poster presentation)

ミャンマー農山村で高頻度に利用されるタケ(Bambusa polymorphaCephalostachyum pergracile)の個体群動態と持続可能性

*上田健太(広島大学総合科学), 山田俊宏(広島大学総合科学), 奥田敏統(広島大学総合科学), Ei Ei, Flaing(ミャンマー森林研究所)

ミャンマーの農山村地域では住民による林産物利用が盛んである。特にBambusa polymorpha(チャタンワ)とCephalostachyum pergracile(ティンワ)は最もよく利用されている森林資源である。しかし、調査地域では2種のタケには利用制限がなく、住民の過度な採取によりタケ個体群の減少や消滅が懸念され、それに伴い採取量も減少する可能性がある。本研究ではミャンマーの農山村地域における現在の採取圧下でのタケ個体群と住民のタケ採取の2つの持続可能性を定量的に評価することを目指した。2015年3月と2016年3月に8個の400m2の調査区を用いた毎木調査を行い、両種の1年間の個体数の変動を記録した。野外調査から得られた個体群動態パラメータを基に、調査時点の利用状況が続いた時の将来の個体数の変動を表す推移行列モデルを作成した。さらに、調査時に比べて稈の採取量が増えた場合のモデルも作成した。個体群の持続可能性については50年後も個体群が存続していれば持続可能であると考えた。タケ採取の持続可能性は50年後のタケ採取量と調査時点の採取量の比が100%以上であれば持続可能、それ未満であれば持続可能でないとした。調査時点の利用状況が続いた場合、個体数の比がチャタンワは84.1%、ティンワは27.5%、採取数の比はそれぞれ104%、115%となり タケ個体群、タケ採取ともに持続可能であることが示された。しかし、採取量が調査時点より増えた場合、個体数の比がチャタンワは40.6%、ティンワは10.7%、採取数の比はそれぞれ28.6%、28.1%となり、タケ個体群は持続可能であるもののタケ採取は持続可能でないことが示された。以上より、調査時点の利用状況はタケの生産と住民の採取のバランスが取れている状態であると考えられる。持続的なタケ資源の利用のためには、採取量を調査時のレベルを超えない程度に抑えるような配慮が必要である。


日本生態学会