| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-408  (Poster presentation)

伊豆大島における国内外来両棲類の分布状況

*徳吉美国, 倉本宣(明大・農)

ほとんどの種が卵および幼生段階を水中で過ごすことから、水域の撹乱が外来両棲類の定着成功や侵略性に与える影響は大きいと考えられる。研究対象地の伊豆大島は土壌に火山噴出物のスコリアを含むため、人工的な水域を除くと、ほとんどの水域は一定の期間しか維持されない。本研究では、水域の撹乱と定着・侵略性の関係を明らかにするために、伊豆大島に導入されたモリアオガエル、アズマヒキガエル、ツチガエルを対象として、分布状況および個体数の調査を行った。
分布状況の調査として伊豆大島の水域において現地での踏査やアンケート調査を用いて外来両棲類3種の繁殖状況を明らかにした。個体数調査としてモリアオガエルでは個体数の指標として卵塊数を計測し、それを説明する要因として水域の面積、森林の面積、導入場所からの距離を求め、卵塊数に与える影響の正負を解析した。また、伊豆大島の水域を干上がりの時期や頻度に基づいて通年撹乱型、冬季撹乱型、安定型の3タイプに分類した。
調査の結果から、モリアオガエルはほとんど全ての水域を、アズマヒキガエルは冬季撹乱型と安定型の水域を繁殖場所として利用しており、両種共に島のほぼ全域に分布していることが明らかになった。一方で、ツチガエルは生息が確認されなかった。特にモリアオガエルは通年撹乱型の水域では個体数が高密度に達していたことから、撹乱が起こりやすい水域においても、一部の種は定着に成功し侵略的になる可能性が示唆された。また、導入場所からの距離が卵塊数に負の影響を与えており、一部の地域ではモリアオガエルの個体数は平衡状態に達していないことが推察された。今後はモリアオガエルの高密度化や侵入動態に着目し、外来種の個体数増加および分布拡大の要因を明らかにすることが期待される。


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