| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-409  (Poster presentation)

小笠原諸島母島列島におけるグリーンアノールの生息適地と在来トカゲの分布

*上田亜衣, 小池文人(横浜国立大学大学院 環境情報学府)

外来のトカゲ類である樹上性のグリーアノールは、小笠原諸島の固有種であるオガサワラシジミなどの昆虫を捕食しておりその減少を招いているほか、在来トカゲ類である地上性のオガサワラトカゲの競争者及び捕食者とも言われている。本研究では、アノールがいない向島と両者が存在する母島での分布を調査し、外来種の存在による在来種のニッチシフトの有無の検討を行うことで、グリーンアノールがオガサワラトカゲの分布に影響を与えているかを明らかにすることを目的とした。
野外調査ではラインセンサスにより両種の地図上での出現地点と地面からの高さを記録した。また、ルート上を10m間隔で全天写真撮影を行い林冠による光環境を記録した。他の環境要因として標高データ(DEM)をもとにした地形の解析により、日射量、集水面積、ラプラシアンなどを算出した。これらの環境変数について、生物を発見した地点と、ルート上の一定間隔おきの地点(バックグラウンド)の環境データをGISで読み込み、一般化線形モデルを用いて生息環境を解析した。また、母島と向島のオガサワラトカゲ、アノールのニッチを同時に説明できる共通の環境軸を考え、作成した共通の環境軸上での2種2生息地のトカゲの分布関係の比較を行った。
共通環境軸を用いて地形環境や局所的な光強度、生息地上高といった異質なニッチを統合したニッチ空間の解析を行った結果、母島オガサワラトカゲと向島オガサワラトカゲのニッチシフトは明らかではなかったが、母島における2種のトカゲは生息地上高という小スケールのニッチですみ分けを行っていることがわかった。また、文献調査を行った結果、生息地上高が高い方の種がより上方にシフトしている現象が一般的に観察されていることから、生息地上高が低い種の方が有利であるなら、このまま地上性のオガサワラトカゲと樹上性のグリーンアノールが共存していくことも考えられる。


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