| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-410  (Poster presentation)

外来ザリガニの侵入歴の違いに伴う行動特性の変化

*工藤秀平(金沢大学理工学域), 北野聡(長野県環境保全研究所), 西川潮(金沢大学環日本海域環境研究センター)

北米原産のシグナルザリガニ(ウチダザリガニ;Pacifastacus leniusculus)は、捕食や競合、病気の媒介などを通じて侵入先の生態系に甚大な被害を与える侵入種である。これまでの研究から、日本に導入されたシグナルザリガニは3つの創始集団(北海道、長野、滋賀)から構成され、うち北海道由来の集団が近年分布域を拡大するとともに、侵入年の新しい集団ほどハサミ(鉗脚)が大型化していることが示されている。本研究では、室内実験を通じて、シグナルザリガニの侵入歴の違いに伴う攻撃性や活発さといった行動特性の変化を検証した。一般にザリガニ類のハサミの大きさは攻撃性と密接な関係があることから、「侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は攻撃性が高く、活発に採餌する」ことを仮説とした。実験には、北海道摩周湖(1930年導入)と長野県片桐ダム湖(2010年定着確認)のシグナルザリガニのオスを用いた。シグナルザリガニのハサミ(相対鉗脚面積)は、摩周湖集団と比べ片桐ダム湖集団で有意に大きかった。各集団の攻撃性を明らかにするため、同一集団のサイズがほぼ同じ2個体を水槽に入れ、5秒ごと10分間の攻撃行動と接近数(両者の距離が1個体長以下になった回数)を記録した(実験1)。次に、各集団の活発さを明らかにするため、ザリガニ個体ごとに初めて見る餌(ジャガイモ)の消費量を測定した。実験1の結果から、摩周湖のシグナルザリガニ集団は、片桐ダム湖集団と比べ、攻撃性が高く接近数が多いことが明らかとなった。実験2の結果からは、両シグナルザリガニ集団間で活発さに明確な差は認められなかった。また、シグナルザリガニの攻撃性と活発さとの間には正の相関は認められなかった。以上より、侵入年の新しいシグナルザリガニ集団は、古い集団と比べ攻撃性が高いことが示された。しかし攻撃性の高い個体は活発であるという仮説は支持されなかった。


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