| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-414  (Poster presentation)

ダム湖における環境DNAを用いた生物検出法の最適化

*池田紗季(神戸大・発達), 沖津二朗(応用地質(株)), 一柳英隆(水源地環境センター), 片野泉(奈良女子大・理), 中井克樹(滋賀県琵琶湖博), 源利文(神戸大・発達)

ダム湖に外来種が定着した場合、湖内に生息する生物に影響を与えるだけでなく、上下流の河川にまで分散する可能性がある。したがって、ダム湖への外来種の侵入を迅速に把握することが重要である。本研究では、環境DNA分析手法をダム湖に適用し、年間を通してサンプリングを行うことで検出率の高まる採水時期や採水位置を調査した。また、環境DNA検出による結果と実際の生息情報を比較することでダム湖における環境DNAの有用性を検証した。本研究では外来魚の代表例であるサンフィッシュ科のブルーギル(Lepomis macrochirus)、オオクチバス(Micropterus salmoides)、コクチバス(M. dolomieu)を対象とした。
福島県三春ダムにおいて岸と沖を含む15地点で、2015年7月~2016年8月にかけてサンプリングを行い、検出率の高まる採水時期や採水位置を検証した。年間を通した調査の結果、全体的に水温の高まる夏季に検出率が高く、冬季に低い傾向が見られたが、繁殖期に検出率が高まることも見て取れた。さらにオオクチバスにおいては、沖よりも岸辺で検出率が高くなることが分かった。また、対象種3種の生息情報が分かっている全国の30のダム湖で2016年8~9月にかけてサンプリングを行い、環境DNA検出による結果と実際の生息情報を比較した。この調査の結果、今回の環境DNAを用いた1回の検出実験だけで、従来法による15年間のデータのおよそ90%と一致させることができた。この結果からダム湖において環境DNA分析手法は有用であると言える。したがって今後、環境DNAを用いた生物モニタリングを行うことで、ダム湖や他の止水域に侵入した外来種の早期発見や駆除に繋がるだろう。


日本生態学会