| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-O-419  (Poster presentation)

霧ヶ峰高原におけるフランスギクを主とするキク科外来植物の分布および群落特性

*辻琴音(信州大学 農学部), 大窪久美子(信州大学 学術研究院農学系)

霧ヶ峰高原では本州中部を代表する半自然草原が分布するが、草原性植物の減少と共に、外来植物の侵入、定着が問題となっている。近年ではキク科外来植物のフランスギクの分布の拡大が懸念されているが、現状は把握されていない。そこで本研究では本地域におけるフランスギク等、計8種のキク科外来植物の分布を把握することを目的とした。またフランスギク優占群落の構造と立地環境条件との関係性を解明し、今後の対策について検討することを最終的な目的とした。
線的分布調査では、踏査により全種の出現地点をGPSレシーバーで測位し、記録した。車道は約19kmで、登山道・遊歩道は約23kmで、合計約42㎞を対象とした。面的分布調査では、フランスギクを対象に優占度階級に基づいて評価した。さらに本種の優占群落を30プロット(面積1㎡)設定し、植物社会学的手法により各出現種の被度及び群度、植物高等を記録、測定した。また立地環境調査では道路までの距離及び相対光量子密度等を測定した。
フランスギクは登山道・遊歩道への侵入は少ないが、車道総延長の約5割で分布した。面的分布では本種は観光宿泊施設の多い白樺湖に近い車山地区で特に分布や優占割合が高かった。これは道路工事による土壌かく乱や種子の持ち込み、白樺湖等の周辺での栽培個体の逸出が考えられた。本種の優占群落はキク科植物が多く占めるススキ−キク科群落や踏圧に強い植物から構成される踏み跡群落に位置付けられた。いずれの群落も遷移初期段階であり、相対光量子密度が高く、オープンな立地で、過度の踏みつけにより植被率が減少し、本種の侵入が容易な立地条件であると考えられた。さらに、ヘラバヒメジョオンが優占する群落でのフランスギクの優占割合が最も高く、乾生的な条件で他のキク科外来植物を構成種とした。本群落型を中心として、駆除や在来群落への復元を優先させることが今後の課題として考えられた。


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